ラテンアメリカ50年、個人的体験と ものづくり(4/5) 大竹茂様

2024年11月の第17回会員大会でご発表いただきました大竹様よりご準備いただいた原稿と写真を頂戴いたしました。5回に分けて公開させていただきます。

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3回目の記事は→こちら

 

第三部:私とラテンアメリカ考古学

これまでのラテンアメリカとの関りの中で、個人的に一番嬉しかったのは、ラテンアメリカの考古学への関心が高まり、古代遺跡を現地に訪れ、古美術品に直接触れることができたことです。
メキシコやペルーの古代遺跡や博物館を何度も訪問する機会を得ました。
そもそも、私が考古学に興味を抱いたのは中学生の時です。校舎の裏側に小高い丘があり古墳のようでした。放課後に友達とその崖を掘っていると土器片が出てきました。偶々、当時の校長は考古学が趣味で校長室には矢じりが飾られていました。校長からは考古学の色々な面白い話を聞かされました。その後、シュリーマンの伝記を読んだりして、考古学全般に対する興味が更に深まり、ついに、日本のシュリーマンと言われる天野芳太郎の名前を知りました。
皆さんもご存じの通り、天野芳太郎は1898年(明治31年)秋田県に生まれました。日本では小型エンジンや饅頭(子育て饅頭)の商売などで財を成し、ラテンアメリカに渡り、パナマやペルーで事業を起こす傍ら、古代アンデス文明(特にチャンカイ文化)の調査研究を行い、1958年(昭和33年)1月、ペルーのリマ市(ミラフローレス地区)に天野博物館を設立しました。
そして、1982年(昭和57年)10月14日に84歳で他界されております。
(詳しくは尾塩尚著、<天界航路 天野芳太郎とその時代>をご参照下さい。)
私が直接天野先生にお会いしたのは、1981年にペルー勤務を終えて日本に帰国する際に、お土産屋で買った土器の鑑定をお願いする為です。当時も、ペルーの文化財の国外持ち出しは禁止されていました。お土産屋で本物など売っているはずはないとの思いで、先生にレプリカである旨の鑑定を出していただくつもりだったのですが、何と本物ですとの鑑定をいただきました。
その結果、当該土器は私がペルーに戻って来るまで、預かっておいていただくことにしました。しかしながら、前述の通り、ゲリラによる支店長襲撃事件の後、支店は閉鎖され、その後、ペルーから撤退しましたので、残念ながら、まだ、預けた土器に再会できていません。
天野先生が情熱を込めてアンデス文明についてお話をされる姿に、正しくこの人は日本のシュリーマンであるという確信を得た次第で、私のアンデス考古学に対する興味は更に深まりました。
また、天野先生が亡くなられた日は私の誕生日(10月14日)でもあり、不思議な縁を感じている次第です。

今から約6千500万年前頃に恐竜が絶滅したあと、哺乳類が地上で適応し爆発的に増加、霊長類は森林で樹上生活を開始したと言われています。それから、ヒトの祖先が地上に進出して直立二足歩行を行い、約250万年前頃から石器を作り始めたと言われています。
従って、我々ものづくりソフィア会のルーツはその頃まで遡ることができるかもしれません。
今から約20万年前にアフリカで誕生したホモサピエンスが、2万年前にベーリング陸橋にやってきたものの、氷河に阻まれて南下できず、1万5千年前に無氷回廊ができてから合衆国当たりを抜け、それから1万4千年前に米大陸の南端まで達したとの仮説が有力です。

今日は、これまでに収集した土器や洞窟画、更にはSantiago Plata氏より譲っていただいた線刻画(岩絵)の拓本をご紹介したいと思います。

尚、土器の多くは、私がサンパウロ勤務の際に、サンパウロ美術館の一階で、毎週日曜日に開かれていた骨董市で求めたものです。
売り主の話しによると、父親が趣味で土器を収集していたが、父が亡くなってそれを引き継ぐ者がいないので売却したいと言っていました。
また、売れずに残ったものは博物館に寄贈するつもりだとも言っていました。正式に鑑定をしたわけではないので本物かレプリカか断言はできませんが、私はあくまでも考古学者ではなく考古学愛好者であり、自分としては海外勤務の思い出の一つとして収集しているわけであり、あまりに真贋にこだわる必要はないかなと思っています。

 

次に、Santiago Plata氏の線刻画拓本を紹介させていただきます。同氏は1974年生まれのコロンビア人の画家で、当時、自転車で南米大陸の古代遺跡の線刻画を拓本として記録しており、私がブラジリアの大使館に勤務してい時(2006年)に知り合いました。

 

尚、岩絵につきましては、私がブラジルの洞窟を訪問して写真を撮ったものです。

また、ラテンアメリカ時報1420—2017年秋号に、<Lagoa SantaからSerra da Capivaraへ 考古学・岩絵の旅>と題して寄稿させていただいておりますので、こちらもご参照ください。

 

 

最後に、本日は土器と線刻画拓本の現物をいくつかお持ちしましたので、是非、実際に手に取っていただいて、いっときでも、古代アンデス文明のロマンを感じとっていただければ幸いです。

 

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